
こんにちは、こうの歯科 歯科衛生士のKです。
「そばを一口食べたら急にむせた」「食事中に頬や舌を繰り返し噛んでしまう」「以前より食事に時間がかかる」——こんな変化、最近感じていませんか?
多くの方が「年のせいだから仕方ない」と受け流します。でもこれらは口腔機能低下症という、保険適用で検査・指導が受けられる疾患のサインかもしれません。しかもこれは60歳以上の方だけの問題ではなく、早ければ40代から始まることもあります。「歯が残っているから大丈夫」という方も多いのですが、食べる力・飲み込む力は、歯の本数とは別に衰えていきます。こういったお悩みをお持ちの方は非常に多く、決して特別なことではありません。

この記事を書いた人
こうの歯科|チーフ歯科衛生士・口育士・ホワイトニングコーディネーター
3人の男の子 育児奮闘中のママ歯科衛生士。忙しい毎日でも続けやすい予防ケアを大切にしながら、患者さんと二人三脚でお口の健康維持をサポートしています。
口腔機能低下症とは——「食べる力」が静かに落ちていくメカニズム

健康な状態では、唾液の分泌・舌の筋力・咀嚼筋・嚥下反射が連携して「食べる・飲み込む」機能を支えています。これらが加齢とともに複合的に低下した状態が口腔機能低下症です。2018年に日本歯科医学会が保険収載の傷病名として認定しており、50歳以上であれば3か月に1回、保険適用で精密検査を受けられます。
診断は以下の7つの項目で行われ、3項目以上が基準値未満の場合に口腔機能低下症と診断されます。
| 項目 | わかりやすく言うと |
|---|---|
| 口腔衛生状態不良 | 舌の汚れ(舌苔)が多い状態 |
| 口腔乾燥 | 口の中が乾いてパサつく |
| 咬合力低下 | 噛む力が弱くなっている |
| 舌口唇運動機能低下 | 「パ・タ・カ」が素早く言えない |
| 低舌圧 | 舌の筋力が衰えている |
| 咀嚼機能低下 | 食べ物をうまくすりつぶせない |
| 嚥下機能低下 | 飲み込む力が弱まっている |
40〜50代の方への補足として、舌圧の低下は口呼吸・ほうれい線・頬のたるみにもつながりやすいため、早めの意識が大切です。
なぜ60代以降に急に進みやすいのか
「今まで普通に食べられていたのに、なぜ急に?」——実は急に悪化するのではなく、3つの要因が長年かけて積み重なり、60代で表面化することがほとんどです。
①加齢による筋力・神経反射の低下:舌や咀嚼筋も全身と同様に衰え、嚥下反射のタイミングも遅くなります。
②唾液分泌量の減少:唾液は食べ物をまとめる潤滑剤。加齢や薬の影響で減るとむせやすくなります。
③長年の自己流ケアによる口腔環境の悪化:舌の汚れや歯の欠損の放置が、知らないうちに機能低下を助長します。
だからこそ、今気づくことに大きな意味があります。早い段階で対処すれば、低下のスピードを緩やかにしていくことが十分に目指せます。
「オーラルフレイル」——口の衰えが全身の健康寿命を左右する

口腔機能低下症の前段階として注目されているのがオーラルフレイル(口の虚弱)です。食べこぼしが増えた・滑舌が悪くなったという小さな変化から始まり、放置すると栄養不足・身体のフレイル・要介護へとつながります。
東京科学大学の研究では、オーラルフレイルがある方は要介護リスク約1.23倍・死亡リスク約1.34倍で、65歳時点の健康寿命が約1.4〜1.5年短くなる可能性が報告されています(参考:オーラルフレイルが高齢者の健康寿命を短縮:定期的な歯科受診が鍵に | Science Tokyo – 東京科学大学)。
また、嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎リスクと直結します。通常は嚥下反射・咳反射が気道を守っていますが、これらが低下すると口腔内の細菌を含む唾液や食物残渣が気管に流れ込みやすくなります。さらに咀嚼機能の低下は脳への刺激を減らし、認知症リスクとの関連も指摘されています。「口の健康」は全身の健康寿命に直結しているのです。
まず自分で確認してみましょう——セルフチェック

上の「聖隷式嚥下質問紙」は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した評価シートです。
4点以上になった方は、ぜひ一度歯科医院での検査をご検討ください。
こうの歯科での検査・トレーニング指導の流れ

こうの歯科では、60歳以上の新患の方には問診の段階で口腔機能を確認しています。気になるスコアがある場合は保険適用の精密検査へ進みます。舌圧測定器による舌の押しつぶし力の測定、「パ・タ・カ」発音スピードの測定(オーラルディアドコキネシス)、嚥下スクリーニングなどを行い、3項目以上に該当した場合に個別のトレーニング指導をご提案します。
トレーニングは状態に合わせて提案します——舌回し・あいうべ体操・ペットボトルを使った舌圧訓練など。「完全に治す」のは難しいですが、機能低下の速度を緩やかにし、5年後・10年後の状態を変えることを二人三脚でサポートします。
よくあるご質問
Q. 本当に改善できますか?
年齢を重ねるなかで口腔機能が低下していくこと自体は、どうしても避けられません。目指すのは「元通りにすること」ではなく、急激に落ちていくのを防ぎ、低下のスピードを緩やかにしていくことです。適切なトレーニングと定期的なケアを続けることで、それは十分に目指せます。何歳からでも遅すぎるということはありませんので、まずは現状を知ることから始めましょう。
Q. 検査は痛いですか?
舌圧測定や「パ・タ・カ」の発音テスト、咀嚼検査など、どれも痛みを伴わない検査がほとんどです。1回あたりの所要時間も数分〜十数分程度で、体への負担はほとんどありません。「痛そうで不安」という方こそ、まずは一度お気軽にご相談ください。
Q. 本人が嫌がる場合は?
ご本人が乗り気でない場合は、まずはご家族だけでご相談いただいて構いません。ご家庭での様子をお聞きしながら、無理のない声かけの仕方や来院のタイミングを一緒に考えます。ご本人のペースを大切にしながら進めていきますので、どうぞご安心ください。
気になったら早めのチェックを——口腔機能低下症は「早期発見・早期ケア」が鍵
「むせる」「噛みにくい」は年のせいではなく、口腔機能低下症のサインかもしれません。まず現状を知ることが第一歩です。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

お問い合わせ・ご予約はこちらから
📞 047-457-1131
📍 千葉県船橋市大穴北2-1-33
参考文献
- 東京科学大学「オーラルフレイルが高齢者の健康寿命を短縮:定期的な歯科受診が鍵に」
https://www.isct.ac.jp/ja/news/gy1je1u2d6tq - 日本歯科医学会「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」(令和6年3月版)https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240329.pdf
- GC口腔機能評価シート(株式会社ジーシー)
https://www.gcdental.co.jp/product/oralfunction/senior/ - 厚生労働省「歯科疾患実態調査 結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17b.html
※この内容はこれまでの現場経験による当院の見解です。確かな効果を保証するものではありません。
また、当院の許可なく情報を無断転載することは禁止いたします。

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