
こんにちは。こうの歯科、歯科衛生士のKです。
「ネギや糸状の肉が、歯の横からスルッと入り込むようになった」
「鏡を見たら、以前より歯が長く見える気がする……」
こんな変化、思い当たりませんか?
これらはすべて、歯茎下がり(歯肉退縮)の典型的なサインです。「年のせいかな」と流してしまいがちですが、原因を知って早めに対処できれば、進行を十分に緩やかにできます。
歯科衛生士として多くの患者さんと向き合う中で、「もっと早く気づいていれば」と話してくださる方が少なくありません。だからこそ、この記事をぜひ読んでほしいのです。

この記事を書いた人
こうの歯科|チーフ歯科衛生士・口育士・ホワイトニングコーディネーター
3人の男の子 育児奮闘中のママ歯科衛生士。忙しい毎日でも続けやすい予防ケアを大切にしながら、患者さんと二人三脚でお口の健康維持をサポートしています。
「歯が長くなった」のは気のせいではありません――歯茎下がり・ブラックトライアングルとは

歯肉退縮(歯茎下がり)とは、歯を支える歯茎が少しずつ下がり、本来は歯茎の中に隠れているはずの歯根が露出してくる状態です。歯が「長く見える」のはまさにこのためです。
あわせて起きやすいのがブラックトライアングル。歯と歯の間の歯茎が下がることで、三角形の黒い隙間が生まれます。見た目の老け感だけでなく、次のような問題を引き起こします。
| 影響 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 食べ物の挟まり | 隙間に食片が入りやすくなる |
| 虫歯リスク増加 | 露出した歯根(セメント質・象牙質)はエナメル質より柔らかく、根面う蝕が起きやすい |
| 見た目の変化 | 歯が長く・老けた印象になる |
| 知覚過敏 | 冷たいものがしみやすくなる |
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、歯周ポケット(4mm以上)の保有率が60〜64歳で59.1%、65〜69歳で54.0%と報告されています。歯周ポケットは歯周病が進行しているサインであり、その歯周病は歯茎下がり(歯肉退縮)を引き起こす主な原因のひとつです。つまり、歯周病が広がりやすいこの年代は、歯茎下がりにもつながりやすい状態にあるといえます。決して他人事ではなく、多くの方に関わる変化なのです。
なぜ50〜60代以上に歯茎下がりが増えるのか――3つの要因

「加齢だから」と一言でまとめられがちですが、要因は複数あります。
① 加齢による歯肉・骨の変化
もともと歯肉が薄い方や、下がりやすい形の歯茎をしている方は退縮しやすく、これは年齢に関わらず若い方にも見られます。年齢とともに歯槽骨も少しずつ変化し、生理的な変化として、ゆっくりと歯茎が下がることは避けられません。
② 長年の誤ったブラッシング習慣
「しっかり磨こう」という意識が、実は歯茎を傷める原因になっていることがあります。強い力での横磨きを何十年も続けると、歯茎が少しずつ削れていきます。良かれと思っていた習慣が原因になるケースは、診療室でもよく見られます。
③ 歯周病の静かな進行
歯周病は痛みなく進行するのが特徴です。長期間の炎症によって歯を支える骨が溶け、歯茎が後退します。食いしばりや歯ぎしりが骨への負担を増やし、退縮を加速させることもあります。
「なぜ下がっているかの原因は、人によって異なります」。ご自身の歯茎のタイプを早いうちに知っておくことが、早めの対処につながります。だからこそ、自己判断ではなく歯科での診断が大切なのです。
「加齢だから仕方ない」は半分だけ正解――放置すると5年後に後悔する理由

正直にお伝えします。一度下がった歯茎は、自然には戻りません。
ただし、「もう終わり」ではありません。目標は「元通り」ではなく、「現状維持・進行を緩やかにすること」。原因を特定して取り除けば、それは十分に達成できます。
なお、外科的に歯肉移植を行って修復するという選択肢もありますが、まだ一般的な治療ではなく、費用も高額になる場合があります。まずは原因を取り除き、進行を抑えることが現実的な第一歩です。
怖いのは放置した場合です。今は「少し気になる程度」でも、5年後にはさらに進行して歯がグラつくほどになっていることもあります。歯周病が重症化してから治療すると、炎症が落ち着く過程でさらに歯茎が大きく下がってしまうため、早期介入が何より重要です。
実際に、こうの歯科では年齢を重ねた方から「定期通院を始めてから歯茎の出血が減った」というご報告をいただくこともあります(あくまで個人の体験で、すべての方に同様の結果が出るわけではありません)。「もう年だから」という言葉を、私たちはいつも「そんなことはありません」とお返ししています。今がそのタイミングです。
あなたにも当てはまりますか? — 歯茎下がり・セルフチェック
☐ 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
☐ 鏡を見ると、以前より歯が長く見える
☐ 冷たいものや甘いものがしみる(知覚過敏)
☐ 歯磨きのとき歯茎から血が出ることがある
☐ 歯の根元付近が白っぽく見えるか、段差を感じる
☐ 歯科検診に1年以上行っていない
1項目でも当てはまる方は、ぜひこうの歯科にご相談ください。
自分でできるホームケアと、歯科医院でしかできないこと

✅ 今日からできるホームケア
- ブラッシング圧を軽くする:鉛筆持ちで、力を入れずに小刻みに動かす
- 硬い歯ブラシは選ばない:できれば歯科医院で、今のお口の状態に合ったものを選んでもらいましょう
- 歯間ブラシ・デンタルフロスを活用する:歯と歯の間のプラーク除去に不可欠
⚠️ ホームケアの限界を知っておいてほしいこと
どれほど丁寧に磨いても、自分で原因を特定することはできません。歯茎下がりの原因が「磨きすぎ」なのか「歯周病」なのか「歯ぎしり」なのかによって、対処法はまったく異なります。誤ったケアを続けると、かえって悪化させてしまうこともあります。
歯科医院では、原因の特定と診断・プロによるクリーニング・あなたに合ったブラッシング指導・定期メンテナンス(1〜6ヶ月ごと)による進行抑制が可能です。予防歯科の定期通院は、歯周病・歯茎下がりに対する最も確実な対策のひとつです。
歯科衛生士Kからのワンポイントコラム
「50〜60代の患者さんからよく聞くのが、『もっと早く来ればよかった』という言葉です。歯茎が下がり始めたサインに気づいても、『加齢だから』とそのままにしてしまうケースも多く見られます。診療室でよくお伝えするのは、『今が一番早いタイミング』ということ。進行を止めるうえで、今日から始めるホームケアと1〜6か月ごとの定期メンテナンスの組み合わせが、最も確実な選択肢です。(個人差があります)」
よくあるご質問(FAQ)
Q. 歯茎が下がったら、元には戻りませんか?
A. 一度下がった歯茎が自然に戻ることはありません。ただし、原因を取り除き適切なケアを続けることで、進行を大幅に緩やかにすることは可能です。まずは原因の特定が第一歩です。
Q. 歯茎下がりは痛みがないので、しばらく様子を見てもいいですか?
A. 歯茎下がりと歯周病は痛みなく進行するのが特徴です。「痛みがない=問題ない」ではなく、痛みが出るころには既に歯周病がかなり進行していることがほとんどです。早期発見・早期対応が重要です。
Q. ブラッシングを丁寧にすれば、歯科に行かなくても大丈夫ですか?
A. 自宅ケアは予防において重要ですが、原因の特定・歯石やプラーク(歯垢)の除去・バイオフィルム(細菌の膜)の除去・歯茎の状態評価は歯科でしかできません。とくにバイオフィルムの除去が最も大切です。どれほど丁寧に磨いても目に見えない汚れは必ずついてしまい、それはプロである私たちでも同じです。さらに歯科医院では、その時々のお口の状態に合わせた最適なセルフケア指導も受けられます。ホームケアと定期受診を組み合わせることが最善策です。
こうの歯科へのご相談はお気軽に

「歯茎が下がってきた気がする」「食べ物が挟まりやすくなった」と感じている方、またご家族の口腔健康が心配な方は、ぜひこうの歯科へご相談ください。初診時には丁寧なヒアリングと口腔内チェックを行い、あなたの状態に合ったケアプランをご提案します。
お問い合わせ・ご予約はこちらから
📞 047-457-1131
📍 千葉県船橋市大穴北2-1-33
参考文献
- 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59190.html
※この内容はこれまでの現場経験による当院の見解です。確かな効果を保証するものではありません。
また、当院の許可なく情報を無断転載することは禁止いたします。

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